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最高裁判所第二小法廷 昭和28年(オ)80号 判決 1955年10月28日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人弁護士樫村広史の上告理由は別紙記載のとおりである。

上告理由の二は、原判決が、上告人に対する換地または換地予定地の指定を被上告人に命ずることは、司法裁判の範囲に属しない旨を判示したのに対し、原判決は憲法三二条、裁判所法三条一項に違反すると主張するのである。

記録に徴するに、上告人の本訴請求は、上告人が従前賃借権を有していたと主張する原判示(イ)の土地の換地または換地予定地として原判示(ロ)の土地の指定及び交付を求め、または、指定交付の義務の確認を求めるものである。しかし、換地または換地予定地の指定は、都市計画法一二条二項によつて準用せられる耕地整理法三〇条一項に従い、従前の土地の地目、地積、等位等を標準として、整理施行者が決定すべきものであつて、若し指定が右法条の趣旨に適合しない場合には、土地所有者及び関係者は、場合によつてその取消を求めて争訟を提起することができるけれども、土地所有者または関係者は、特定の土地を指してその指定を請求する権利を有するものではない。ことに原判決の確定するところによれば、上告人は特別都市計画法施行令四五条による賃借権の届出もしていないのであるから抽象的な換地指定の請求権も有しないものといわなければならない。(換地上の上告人の権利に関しては、土地所有者と上告人との間で解決すべき問題であつて、被上告人の関与しなければならない問題ではない。)しからば、裁判所が行政庁を被告とする訴訟の判決で行政庁に対し一定の行政処分をすることを命ずることができるかどうかを論ずるまでもなく、上告人の請求は本来失当であり、論旨は結局理由がないものといわなければならない。

上告理由の一は、本件の場合、整理施行者は上告人に対し換地または換地予定地を指定する意思のあることを表明している旨を主張し、この点に関する原判決の判示を非難するのであるが、かりに整理施行者に特定の土地を換地またはその予定地として指定する意思を有していたとしても、前述のとおり、上告人は他の土地を特定して指定を求める権利を有しないのであるから、かりに原判決に所論のような違法があつても、原判決の結果に影響はなく、論旨は理由がない。

以上のとおり本件上告は理由がないからこれを棄却することとし、民訴四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎 裁判官 池田克)

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